問46
Aさん(58歳、男性)は農作業中に有機リン系殺虫剤を散布していたところ、急な嘔気と頭痛、呼吸困難が出現したため救急搬送された。搬入時、呼吸は促迫で流涎があり、縮瞳が認められた。Aさんに直ちに投与される薬剤はどれか。
- 1ビタミンK製剤
- 2オキシコドン塩酸塩
- 3バンコマイシン塩酸塩
- 4アトロピン硫酸塩水和物✓ 正解
正解
4
解説
有機リン系殺虫剤はコリンエステラーゼを阻害してアセチルコリンを過剰に蓄積させ、流涎・縮瞳・呼吸促迫(気道分泌過多)などのムスカリン様症状(コリン作動性中毒)を引き起こす。これに対しては抗コリン薬であるアトロピン硫酸塩水和物を直ちに投与し、ムスカリン様症状を拮抗させる。したがって選択肢4が正しい。
選択肢の解説
1ビタミンK製剤はワルファリンの拮抗や凝固障害に用いるもので、有機リン中毒の治療薬ではない。誤りである。
2オキシコドン塩酸塩は医療用麻薬(オピオイド)で疼痛緩和に用いる。呼吸抑制を起こしうるため有機リン中毒には不適で、治療薬ではない。誤りである。
3バンコマイシン塩酸塩は抗MRSA薬などの抗菌薬であり、中毒の解毒には無効である。誤りである。
4アトロピンは抗コリン薬で、過剰なアセチルコリンによるムスカリン様症状を拮抗する有機リン中毒の第一選択薬である。正しい。
用語
- 有機リン系殺虫剤
- 有機リン化合物を有効成分とする農業用殺虫剤の総称。神経伝達物質の分解酵素(コリンエステラーゼ)を不可逆的に阻害し、アセチルコリンの蓄積によるコリン作動性中毒を引き起こします。中毒症状は筋肉の脱力、呼吸不全、視覚障害など多岐にわたります。
- 流涎
- 唾液分泌の増加により、唾液が口から流れ出る症状。有機リン中毒では副交感神経優位によるムスカリン様症状として現れ、気道分泌物の増加と合わせて呼吸困難の原因になります。
- 縮瞳
- 瞳孔が異常に小さくなる症状。有機リン中毒では副交感神経系の過剰刺激(ムスカリン様症状)により生じ、抗コリン薬であるアトロピンの投与対象となる重要な臨床徴候です。