問47
状況設定 問45-47
Aさん(30歳、初産婦)は妊娠40週5日、病院に電話し「破水しました。お腹の張りはありますが、12〜15分くらいの間隔で不規則です」と話した。30分後に病院に到着し、クスコ式腟鏡で診察し、BTB試験紙は青色を示した。その後、分娩監視装置が装着された。12〜15分に1回の子宮収縮があり、胎児心拍数基線150 bpm、基線細変動は正常で、軽度の変動一過性徐脈が1回みられた。体温37.2℃、脈拍80/分、内診所見は子宮口2 cm開大、展退度30%、Station−2。昨日、妊婦健康診査を受診しており、超音波検査にて推定胎児体重3,900 g、羊水ポケットは3 cmであった。
Aさんは3,800 gの児を吸引分娩で出産した。会陰縫合時、肛門括約筋までの会陰裂傷が観察された。分娩後1時間が経過し「おしりがズキズキと痛いです。便が出るような気がします」と訴えた。子宮底は臍高。恥骨結合部の溝が触知されない。このときに考えられるのはどれか。
- 1腟壁血腫✓ 正解
- 2子宮内反症
- 3会陰裂傷Ⅳ度
- 4恥骨結合離開
正解
1
解説
吸引分娩・会陰縫合後に肛門部痛・便意様の圧迫感を訴え、子宮底は臍高(収縮良好)だが恥骨結合部の溝が触れない状態から病態を問う問題である。子宮収縮は良好で外出血がないにもかかわらず肛門への圧迫感(便意様症状)や局所の膨隆・疼痛がある場合、腟壁や会陰の深部に血液が貯留する腟壁血腫(産道血腫)が考えられる。器械分娩や会陰裂傷後に血管損傷で生じやすく、血腫が直腸を圧迫して便意を感じさせる。よって1が正しい。会陰裂傷Ⅳ度は直腸粘膜まで及ぶ裂傷で観察時に確認されるはずだが本例は肛門括約筋までのⅢ度に相当し、子宮内反症は子宮底が触れず激しい疼痛・出血性ショックを来し、恥骨結合離開は恥骨部の離開・圧痛と歩行困難が主体で便意様症状とは結びつかない。
選択肢の解説
1子宮収縮良好で外出血がないのに肛門部の圧迫感・便意様症状と疼痛があり、腟壁深部に血液が貯留する腟壁血腫が直腸を圧迫していると考えられ、正しい。
2子宮内反症では子宮底が腹部で触知できず、激しい下腹部痛と多量出血・ショックを来すが、本例は子宮底が臍高で触知でき所見が合わないため誤りである。
3観察された会陰裂傷は肛門括約筋までのⅢ度であり、直腸粘膜まで及ぶⅣ度であれば縫合時に確認されるはずで、現症状(血腫を疑う膨隆と便意)はⅣ度では説明しにくいため誤りである。
4恥骨結合離開では恥骨部の疼痛・圧痛や歩行・体位変換時の痛みが主症状で、肛門部の便意様の圧迫感とは病態が異なるため誤りである。
用語
- 肛門括約筋
- 肛門の開閉を制御する筋肉で、内肛門括約筋と外肛門括約筋から構成されます。会陰裂傷がこれに及ぶと排便機能障害の原因となるため、産科では重要な解剖学的ランドマークです。
- 会陰裂傷
- 分娩時に会陰部が裂ける損傷で、Ⅰ度は粘膜のみ、Ⅱ度は筋層、Ⅲ度は肛門括約筋、Ⅳ度は直腸粘膜に及びます。修復後も機能障害のリスクがあり、産科救急で重要な概念です。