問113
状況設定 問112-114
Aさん(26歳、女性)は高校生のころからリストカットを繰り返し、ボーダーラインパーソナリティ症〈境界性パーソナリティ障害〉の診断を受けている。最近仕事が忙しくなったパートナーに「今すぐ返事が欲しい。私を見捨てるのか」とメールを送り続け、帰宅したパートナーが、手首から血を流しているAさんを見つけた。パートナーに付き添われて総合病院の救急外来を受診したAさんは、意識清明で神経損傷はなく、手首の処置をした看護師に「消えてしまいたい。生きている意味がない」と話した。
Aさんは興奮が続いたため、精神科医の診察を受け、入院となった。入院後は担当のB看護師に何度も声をかけていた。入院3日の深夜、B看護師に「パートナーが電話に出ないので、私の代わりに電話してほしい」と依頼があった。B看護師がすぐに対応できないことを伝えると「Bさんを私の担当から外してほしい」と複数の看護師に訴えた。B看護師は「私が忙しかったから、Aさんを怒らせてしまった」と話している。看護チームの対応として適切なのはどれか。2つ選べ。
- 1B看護師の担当患者を減らす。
- 2Aさんの希望に応じて担当者を変更する。
- 3パートナーに、Aさんに電話をするよう連絡する。
- 4カンファレンスでチーム内の看護師の感情を共有する。✓ 正解
- 5日中に時間を決めて話を聞くことを、Aさんに伝える。✓ 正解
正解
4・5
解説
境界性パーソナリティ症の患者が特定の看護師に依存・操作的な要求を強め、担当看護師が自責的になっている状況でのチーム対応を問う設問である。この障害では理想化と脱価値化(陽性・陰性の分裂)が生じやすく、対応はチームで一貫した枠組み(リミットセッティング)を共有することが原則である。スタッフ間の陰性感情をカンファレンスで共有して巻き込みを防ぐこと(選択肢4)と、患者の要求に都度応じるのではなく日中に時間を決めて話を聞くと枠組みを示すこと(選択肢5)が適切で、正答は4と5の2つである。
選択肢の解説
1B看護師の担当患者を減らすことは、自責感を抱くB看護師個人の問題に矮小化するもので、チームで一貫した対応を図る原則にそぐわず適切でない。
2Aさんの希望に応じて担当者を変更することは、操作的な要求に応じて治療の枠組みを崩し、分裂(スプリッティング)を助長するため適切でない。
3パートナーに電話をするよう連絡することは、患者の依存的・操作的要求にそのまま応じるもので、対人関係上の課題への治療的対応にならず適切でない。
4カンファレンスでチーム内の看護師の感情を共有することは、スタッフの陰性感情や巻き込みを整理し一貫した対応を保つために有効で適切である。
5日中に時間を決めて話を聞くことを伝えるのは、要求に都度応じるのではなく明確な枠組み(リミットセッティング)を示す対応で適切である。
用語
- 興奮
- 精神的興奮状態を指し、躁状態や不安による落ち着きの無さなど、精神科領域で多くの疾患で見られる症状。この設問では患者の情動不安定さの背景にある症状として提示されており、適切なチーム対応が必要とされる。