問114
状況設定 問112-114
Aさん(26歳、女性)は高校生のころからリストカットを繰り返し、ボーダーラインパーソナリティ症〈境界性パーソナリティ障害〉の診断を受けている。最近仕事が忙しくなったパートナーに「今すぐ返事が欲しい。私を見捨てるのか」とメールを送り続け、帰宅したパートナーが、手首から血を流しているAさんを見つけた。パートナーに付き添われて総合病院の救急外来を受診したAさんは、意識清明で神経損傷はなく、手首の処置をした看護師に「消えてしまいたい。生きている意味がない」と話した。
入院後1週、Aさんは気分の変動があり、夕方になるとイライラして、ホールでテレビを見ている他の入院患者に大声で攻撃的な発言を繰り返した。看護師が声をかけると「テレビの大きな音が父の声に聞こえた。子どものころ、父が毎晩お酒を飲んで暴れたので怖かった」と話した。Aさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。
- 1他の患者に大声を出さないよう指導する。
- 2過去のつらい体験は思い出さないよう伝える。
- 3日中、大音量のテレビに慣れる練習を提案する。
- 4気持ちを言語化したことを肯定的にフィードバックする。✓ 正解
正解
4
解説
幼少期の父による飲酒・暴力(虐待的体験)が背景にある患者が、テレビ音を契機に過去のつらい体験を想起し攻撃的になった後、その気持ちを言語化できた場面の対応を問う設問である。攻撃的な行動の背景にある感情やトラウマ体験を本人が言葉にできたことは、感情の調整やセルフコントロールにつながる重要な一歩であり、それを肯定的にフィードバックして支持することが治療的に望ましい。よって選択肢4が適切で正答である。
選択肢の解説
1他の患者に大声を出さないよう指導するのは、行動の背景にある感情やトラウマを無視して行動だけを抑制するもので、支持的でなく適切でない。
2過去のつらい体験は思い出さないよう伝えるのは、感情表出を抑圧させ回避を促す対応で、感情の言語化を支える観点から適切でない。
3大音量のテレビに慣れる練習を提案するのは、トラウマを想起させる刺激に根拠なく曝露させるもので、かえって苦痛・症状を悪化させる恐れがあり適切でない。
4気持ちを言語化したことを肯定的にフィードバックするのは、感情のコントロールにつながる前向きな変化を強化し支える対応で適切である。