第109回 助産師国家試験(午前)状況設定助産診断・技術学

44

状況設定 問42-44

Aさん(38歳、初産婦)は妊娠34週1日、妊婦健康診査でかかりつけの産婦人科を受診した。「最近、足のむくみが気になります」と訴えている。身長160 cm、体重65 kgで2週前から6 kg増加している。血圧138/94 mmHg、尿蛋白(−)、浮腫+。超音波検査で推定胎児体重1,660 g(−1.9 SD)、30分間の観察で呼吸様運動を1回、体幹の動きを3回、四肢の伸展屈曲運動を1回みとめ、羊水ポケット3 cm、子宮頸管長30 mmであった。子宮収縮の自覚はあり、時折、痛みを感じることがある。胎児心拍数陣痛図(別冊No. 2)を別に示す。

Aさんから「頭が痛くて目がチカチカする」とナースコールがあり、助産師が訪室した。意識は清明、体温37.4℃、血圧168/110 mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉98%(room air)である。このときの助産師の対応で正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 1酸素を投与する。
  2. 2部屋を暗くする。✓ 正解
  3. 3降圧薬を準備する。✓ 正解
  4. 4水分の摂取を促す。
  5. 5鎮痛薬を準備する。

正解

2・3

解説

妊娠高血圧腎症の経過中に「頭痛・眼華閃発(チカチカする視覚症状)」と血圧168/110 mmHgの重症高血圧を呈した、子癇前駆症状への対応を問う問題である。子癇は重症妊娠高血圧腎症に伴う痙攣で、頭痛・眼症状・上腹部痛などが前駆症状となる。光・音などの外的刺激は痙攣を誘発しうるため、部屋を暗くするなど刺激を最小限にする(2)。同時に重症高血圧(収縮期160 mmHg以上または拡張期110 mmHg以上)であり脳出血等を防ぐため速やかな降圧が必要で、降圧薬を準備する(3)。したがって2と3が正しい。SpO2 98%で酸素化は保たれており酸素投与は不要、水分摂取の促しや単なる鎮痛薬投与はこの病態では優先されない。


選択肢の解説

1SpO2 98%(room air)と酸素化は保たれており、子癇前駆状態への対応として酸素投与の優先度は高くないため適切でない。
2光や音などの刺激は子癇発作を誘発しうるため、部屋を暗くして刺激を最小限にすることは適切である。
3血圧168/110 mmHgの重症高血圧であり脳血管障害予防のため速やかな降圧が必要で、降圧薬の準備は適切である。
4妊娠高血圧腎症の重症高血圧時に水分摂取を促す積極的な根拠はなく、対応として適切でない。
5頭痛は重症高血圧・子癇前駆症状によるものと考えられ、降圧と痙攣予防(硫酸マグネシウム等)が優先で、単なる鎮痛薬の準備は本質的な対応ではないため適切でない。

用語

経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉
経皮的に測定した動脈血中の酸素飽和度を示す指標です。パルスオキシメーターで測定され、正常値は96~100%です。この設問ではSpO2 98%と正常範囲内であることが、酸素投与の不要性を示す根拠となります。
清明
意識が清澄で、覚醒度が正常な状態を医学用語で表現したものです。患者の神経学的状態を評価する際に用いられ、設問の患者は意識が保たれていることを示しています。
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