問題本文
CRMの前提となっている考え方として,最も適切なものはどれか。
選択肢
- ア.競争の少ない領域に他社に先駆けて進出することが利益の源泉となる。
- イ.顧客との良好な関係を構築し,維持することが利益の源泉となる。
- ウ.製品のライフサイクルを短縮することが利益の源泉となる。
- エ.特定市場で大きなシェアを獲得することが利益の源泉となる。
正解
イ. 顧客との良好な関係を構築し,維持することが利益の源泉となる。
解説
CRM(Customer Relationship Management,顧客関係管理)は,顧客との長期的かつ良好な関係を構築・維持することで顧客満足度とロイヤルティを高め,継続的な購買や口コミによる新規獲得を通じて中長期的な利益を生み出すという考え方に基づく経営手法. 顧客の属性情報・購買履歴・問合せ履歴などを一元的にデータベース化し,営業・サポート・マーケティング部門が一貫した対応を取れるようにする. CRMシステムにより個別顧客に最適化された提案や対応を実現する. 競合の少ない領域への先行進出はブルーオーシャン戦略,市場シェア獲得はマーケットシェア戦略,製品サイクル短縮は新製品開発戦略の発想で,いずれもCRMの前提となる「顧客関係こそ利益の源泉」という考え方とは異なる.
選択肢ごとの解説
- ア.誤り. 競争の少ない領域(未開拓市場)に他社に先駆けて進出することが利益の源泉となるという考え方は,キムとモボルニュが提唱したブルーオーシャン戦略の説明で,新たな価値曲線で需要を創造する競争回避型の戦略論である. CRMの前提となる「顧客関係構築こそが利益の源泉」とは発想が大きく異なる別の経営戦略である.
- イ.正しい. CRMは顧客との良好な関係を構築・維持することが利益の源泉になるという考え方を前提に成り立つ経営手法であり,本問の説明はその中核思想に合致するため. 顧客満足度・ロイヤルティ向上を通じた継続購買とライフタイムバリュー(顧客生涯価値)の最大化が長期的収益化の根幹を成す.
- ウ.誤り. 製品のライフサイクルを短縮し新製品を次々と投入し続けることが利益の源泉という発想は,新製品開発戦略やシュンペーター型の創造的破壊の考えに近い別の戦略論である. CRMはむしろ既存顧客との継続的な関係性を重視する考え方で,本選択肢とは前提が大きく異なる経営手法である.
- エ.誤り. 特定市場で大きなシェアを獲得することが利益の源泉となる考え方はマーケットシェア戦略やランチェスター戦略の発想で,市場占有率の量に着目した競争戦略論である. CRMが前提とするのは顧客関係の「質」を高めることであり,規模を追求する本選択肢とは戦略思想が異なる.
ITパスポート 2016年 (平成28年 秋期) の過去問一覧へ戻る・問5